母が死んでから不思議なことがありました

母が闘病を終えて数日経ちました。

母と話すことができなくなってから、とてもいろいろなことを調べています。

死んだらどうなるんだろうとか、どこにいるんだろうとか、ぼんやりと言い伝えられている「空から見てる」だとか、そういうところの根拠みたいなものを調べています。

うちは無宗教だし、スピリチュアルなものもお金の匂いがして基本的に好きません。でも今は縋り付きたくなりますね。冷静な自分が「でも」と鋭く反論するので傾倒しきれないのが少し辛いところです。

結局の所、死んだらどうなるかは誰にもわからないというのが一番まともな話で、スタートから一歩も進まないところに落ちてる紙切れに書いてあるというか、どうしようもなさに気持ちが向かう場所がありません。

ただ、個人的に一番興味深いのは科学の話でした。スピリチュアルも宗教も信じられないなりに、科学で語られる話は少しだけ救いになりました。

意識や魂は量子情報として人間の細胞に蓄えられていて、死ぬとそれが宇宙空間に放出されるだけとか、人間の意識は普通の物理法則で作れないものだから、どこかから受信しているだけで、肉体がなくなれば大元に帰るだけ、とか。

もちろんオカルトを感じないわけではないのですが、正解が結局わからない以上、自分の考えやすいアプローチで母の居場所を想うのはほんの少しだけ救いになります。

ただ、とにかく寂しくて仕方がないです。何をするにも影がちらついて、最寄りのスーパーでは母に頼まれた買い物を思い出すし、冷凍庫には母の貼ったメモが残ってるし、未来の楽しいことを思うだけでも「でもそれを共有できるはずだった人がいない」と、生活のすべてが辛いです。後追いを考える人の気持ちが今ならわかります。

で、タイトルの話なのですが。

ここ数日で何回か、不思議なことが起こったのを聞いてください。

まず自転車の話からです。

私の自転車は長く使っていて、かなりガタが来ています。普通に乗れるんですけど、ペダルを漕ぐ度にギコギコと音がするんですね。

大体1月の頃だったか、少し音が大きくなってきたのを母が気にしていて、直してくれば?と自転車屋に見積もりに行きました。

するとパーツ、ベアリングだかなんだかが錆びついていてパーツ交換になり、ちゃんとした技師しか直せないこともあって4000円だかかかる、みたいな話だったんです。

でも自転車屋さんに聞くと、うるさいだけで乗るのに問題はないというし、私も基本的に近場の買い物でしか乗らないので、まぁいいやと放置することにしました。

母は事ある度に「うるさいね?」とか「やっぱり直してきたら?」とか言って、でも面倒だし、お金かかるし。

ただ日が経つにつれてやっぱり少しずつうるさくなるので、母の入院直前には結局「母の日に買い替えよう」という事になりました。長く使ったし、そろそろいいよねと。母の自転車も古いので、2台買い換えようとなりました。

私は電動自転車をプレゼントしようと思っていたのですが、それはもう終わった話ですね。

で、母が亡くなりました。亡くなった日にはもう葬儀屋に呼ばれて、近場だったので妹と二人で自転車で葬儀屋に向かいました。

向かう途中、妹もびっくりしていたのですが、究極にうるさかったんです。それまでギコギコって感じだった音はガラガラ言ってて、まぁでもこんなもんかなと乗り過ごして。

で、前の記事にも書いた気がしますが、安置所にいた母が口から血を流していたのがショックで、その夜に大泣きしました。ただただお母さんが可哀想で、こんな何も出来ない社会不適合者残して死ぬなんて、ずっと心配で死んでいったのかなとか、でも心配しないでいいよなんて言えるわけ無くて……まぁそれは良いとして。

その次の日だったかな。葬儀の前に黒いネクタイとハンカチと、あとは髪を少し梳いてもらおうと色々な準備に自転車に乗ってあちこち回ったんです。

で、乗ってるときに、アレ?って。音がしなかったんです。母が死んだ日にはガラガラうるさかった自転車の後輪の音が、ギコギコよりももっと小さくなっていました。

無音になって滑りが良くなった、なんてことはなくて、キコキコくらいの音はしてるし、結局ペダルは重いんですけど、それでもなぜだかガラガラしてた音が消えたんです。

ずっとお母さん、気にしてたから、もしかしてなんかした?なんて妹と話して。妹にも音を聞いてもらいましたが、私が自転車を漕いだ時にあまりにも音が変わってるものだから、ぱっと笑顔になったんです。

きっと突き詰めれば金属同士が擦れてサビが落ちたとか、何かしら科学的に説明できるのかもしれませんが、それでも「これまでずっと大きくなるばかりだったサビの音が、母が近くに帰ってきた次の日にほとんど消えた」という現象が起こったんですよね。

で、まだあります。

火葬を済ませて、お母さんの骨を家に持って帰ってきました。

おかえり、と母の部屋に置いて次の日、テレビに挿している「Fire TV」が使えなくなったんです。これはネット番組を見るための道具で、たまにバグっても再起動すれば直るんですけど、何回やっても直らず。

霊魂が近くにあると電子機器に異常が出る、なんてネットで見たものですから、やっぱり妹と少し面白がって、近くで寝てるのかなーとか言って。

でも本当に、何をしても直らない。PCやスマホ、ゲーム機はネットにつながっているのに、Fireだけつながらない。母もこれでよく放送を見ていたからかな?なんて思いつつ悪戦苦闘。

どうしても治らないので、ぼんやり笑点を見ていた時なんですけど、オール巨人阪神さんでしたっけ、漫才をしていて、死ぬことについてのネタを話している時なんですけど、画面が一瞬乱れたんですよね。

その瞬間は私しか見ていなかったんですけど、地デジで画像が乱れることある?と思って。うちだけだったら面白いんだけどな。

それで結局FireTVも直ったんですけど、なんだったのかなと。

信じてないけど、母だったらいいなと思いました。

結局の所それがどうしたって話だし、何をどうしようもないんですけどね。

ただ、そんなことがありました。